ダメな比喩

2002年10月31日
僕らにはもうあの頃の熱が無かった。
一晩中語り合っても冷めることのないアダプターのような熱。
彼女の心はスーパーファミコンのコントローラーのロゴの如く、
次第に薄れて見えなくなっていった。
僕も同じように何も受け入れなくなっていたのかもしれない。
サターンの拡張ロムを挿すところのように…。

しかし彼女を手放す事は考えられない。
デスクリムゾンはプレイしないが手放さない。同じだ。
理由は自分でもわからない。
ただそこにHuカードのように薄い感情がある事は認めていた。
他人の手に渡すのだけは許せない。
僕がここで消す。
方法はこれしかない。
フラグはひとつしか立たないのだ。

古いファミコンからカセットを抜くように力を込める。
彼女が、僕の思い出が、冒険の書が、消える。
彼女はファイプロのように簡単に血を流す。

彼女が最後になにか呟いた。
既にAVケーブルが抜けかかっている彼女の音声は出力できない。
僕の目にもいつのまにか涙が溢れており、
荒いポリゴン同様、目的の画像を捉えられない。

目から涙が乾く頃。
彼女の血液は赤いツインファミコンから、
黒いツインファミコンへと変わっていた。

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